インタビュー

日本ワインは海外ワインと比較して美味しいの?日本ワインはこれからどうなる?ワインアドバイザーに聞いてみました

前回の記事では、『勝沼ワイナリーマーケット 新田商店』さんの店主であり、日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザーの資格を持つ新田正明さんに山梨ワインに特化したお店を開くことに決めた経緯などについてお聞きしました。

今回は、「日本ワイン」の将来性についてや、海外ワインと比べてどこが魅力なの?といったお話を引き続き新田さんに聞いていきたいと思います。

Contents

日本ワインはこれからどうなっていく?

武田
武田
近年日本ワインの注目度が高まっていますが、山梨、そして日本のワインはこれからどうなっていくのか、新田さんの予想はありますか?
新田さん
新田さん
ありますね。(即答)
武田
武田
おぉっ!それはどんなものですか?
新田さん
新田さん
2000年以降くらいから、世界中で栽培とか醸造を学んだ若い子たちが、だんだんと日本に帰って来て、ワイン造りをするようになったんですが…

70~90年代の頃の日本のワイン造りは「目指せフランスとか、目指せイタリア」というスタンスだったんですが、今の若い造り手たちはそうじゃないんですよね。

武田
武田
そうなんですね…!
新田さん
新田さん
「フランスワインはフランスワインのよさがあるし、イタリアワインはイタリアワインのよさがある」ということを分かった上で、「じゃあ日本ワインらしさや、日本ワインが進むべき道ってなんだろう?」と模索するようになったんです。

若い世代がワイン造りを担うようになってから、今ちょうど10年くらいが経つのですが、チリワインとかカルフォルニアワインとも違う「日本らしいワイン」の姿が少し見えてきている気がしますね。

なので、これからも「日本ワインらしさ」とは何か?ってところを追求した、若い醸造家や栽培家がどんどん出てくると思いますし、注目しています。

武田
武田
なるほど…!
日本らしいワインというと、甲州とかマスカット・ベリーAなどの日本固有の品種で作るワインを思い浮かべますが…。
新田さん
新田さん
そうですね、そこはもう外せないですね。
他の国にはないですからね。
武田
武田
あとは甲斐ノワールやヤマ・ソービニオンなども日本固有の品種ですよね。
新田さん
新田さん
そうですね、そういった日本独自のハイブリッド品種もこれからどんどん注目を集めてくると思います。

日本らしいワインを日本にしかない品種で表現していくことで、きっとこれからもっと世界中の多くの人をあっと言わせるようになると思います。
「こんなスタイルのワインもあるんだ!」って。

海外のワインと比べて日本ワインの魅力って何?

武田
武田
フランスなどの海外産のワインと比べてみて、日本ワインの魅力ってなんだと思われますか?
新田さん
新田さん
うーん、それがだんだん比較するものじゃなくなってきてると思うんです。

先程言ったようにフランスにはフランスのよさが、日本には日本のよさがあるという風に皆が思うようになってきたんですよ。

例えば、いま海外では和食ブームで、世界の大都市であるパリやロンドン、ニューヨークの日本食レストランなどでは、少し前までであれば日本酒や焼酎が主に飲まれていたのですが「日本でもワインを造っているなら、日本のワインを飲んでみようか」というようにだんだんと日本ワインも飲まれるようになってきたんです。

武田
武田
へえ~!そうなんですね
新田さん
新田さん
そこでは和食にはやっぱり他の国のワインよりも、柔らかい酸味や後味にちょっと苦みのある日本の甲州ワインが合うねって感じで評価されていて…

そうやって日本のワインが世界中の人に感動を与えているんですよね。

武田
武田
世界中の人に…!なんだか嬉しいですね!
新田さん
新田さん
やっぱり、日本の気候風土に合ったブドウで出来ているんだから、日本の土地柄の食材と合わせて飲むのがいいんですよね。

例えば、日本の夏の蒸し暑い時期に冷やした野菜と飲み合わせるなら、タンニンがガシガシで重ためのボルドーワインよりも、爽やかな酸味だったり心地よい苦みの山梨の甲州ワインのほうが合いますよね。

なのでこの質問の答えとしては、日本ワインの魅力というのは「ワイン」というカテゴリーで括られるものではなく、日本の食材と食べ合わせる「寄り添う飲み物」だというところにあると思いますね。

武田
武田
なるほど、寄り添う飲み物ですか…。

もう他の国のワインと比べてどうかっていうよりも、その国々で造られるワインがそれぞれ良いよねという「多様性」の時代になってきているんですね。

新田さん
新田さん
そうそう、「多様性」。
良いこと言いますね。
武田
武田
ほっ、ほんとですか!(うれしい…)
新田さん
新田さん
20年ちょっと前、私が仕事で海外を取材している時に聞いた話ですが…

当時は「グローバル化グローバル化」って世界中で言われていて…
ネットも普及してくるし、移動手段も高速になるし、「地球はもう一つになるんだよ」って時代だったんです。

でもそんな時、「グローバルスタンダードっていうのは、個々の考え方や社会や宗教を認め合うこと。だから、あの宗教は違うとか、あの国のワインは違うって言うんじゃなくて、他の国や人と尊重し合うのが本当のグローバルスタンダードなんだ」って言っている人がいたんです。

この人すごいなぁ…と思ったことが、私が山梨に帰ってきたときに「山梨らしさを発信していこう」というお店のコンセプトを決めるきっかけにもなったんですよね。

武田
武田
素晴らしい考え方ですね…。
新田さん
新田さん
「あんな風になりたい」という憧れからは敵対心が生まれたりもしますからね。

「あそこはすごい!けど僕たちのすごさもある、そこを表現していこう!」っていう風な考え方でいくと、ワインの比較だけじゃなく、国と国との対立もなくなっていくかもしれませんね…。

ちょっと話が大きくなっちゃいましたね。(笑)

武田
武田
いえいえ!そんなことないです!
新田さん
新田さん
だから、このワインよりこっちのワインの方が優れているとかよりも、「日本のワインと食材で、これとこれを食べ合わせたら美味しい」とか、そういった方向性で認め合っていく方がいいのかなって感じますね。
武田
武田
いいですね。やさしい…。

 

 

新田さん
新田さん
ただ、その一方で日本では、50〜60代くらいの人が山梨の旅館やホテルとかに来ると、「山梨の食材が食べたい」と言いながら注文するのはフランスのボルドーワインだったりする実情もあるわけですが…。

これって日本がちょっと異質なんですよね。

武田
武田
そ、そうなんですか?
新田さん
新田さん
海外の方は、旅行に行ったらその土地のお酒を飲む傾向にあるんです。
武田
武田
地酒がやっぱり一番いいですもんね…。
新田さん
新田さん
そう、だから石和温泉(山梨県にある温泉旅館が集まる街)に泊まる海外の人とかって「お酒をください」と言ったときに月桂冠や大関などのナショナルブランドがでてくると、「ノーノー、この土地のお酒をください」って言うんです。

そんな風に海外の人と日本人とでは感覚が違うんですよね。日本人はどこか海外への憧れがあるというか…。

武田
武田
確かに、私たち世代も海外への憧れがあるかもしれないです。
新田さん
新田さん
でも今は「日本のワインをこれからどうしていこうか?」と日本ワインのありかたを考えている若い醸造家や栽培家も多いから、君たち若い世代には海外からのインバウンドのお客さんに対しても胸を張って日本のワインを勧めてもらいたいですね。
武田
武田
はい…!
新田さん
新田さん
これは私がイタリアに行った時の話なんですが、「お前ワイン産地から来たんだろ、じゃあこのワインの味が分かるだろ」って現地のおじいちゃんに言われてワインを飲まされたことがあったんです。

「熟成を30年した!この地域一番だ!」って胸を張って言ってるんだけど、それがもうダメになっちゃってるワインなんですよね(笑)

武田
武田
えええー!!(笑)
新田さん
新田さん
あまりに自信満々だから「美味しい美味しい」って飲んだけど…(笑)

ああいう自分が造ったものに誇りを持っている感じ、すごい素敵だと思いますね。このおじいちゃん最高だなって。

武田
武田
あはは!はい、最高です!(笑)
新田さん
新田さん
ここに来ないと、これは味わえないっていう、楽しみがあるんですよね。

日本ワインもそういう風になっていけばいいなって思いますね。

新田さんが注目する日本ワインの造り手とは?

武田
武田
現在、新田さんが特に注目しているワイナリーや、人物はいますか?
新田さん
新田さん
そうですね…私の考えとしては、土地の力を反映させているブドウを使ったワインを私は一番は販売していきたいと思っていまして、例えばブルゴーニュなんかでもそうですが、同じ品種のブドウを作っていても畑ごとにどういう風に違うのかというのをしっかり見極めて、その特徴を引き出したワインを造っている人には注目していますね。
武田
武田
なるほど…!
新田さん
新田さん
ラベルに畑や栽培家の名前などの情報をしっかり載せていて、例えば「標高が600mにある畑で栽培したことで、皮が薄く酸の高いブドウができたから、こういうワインになったんですよ」などと、しっかりと説明できる醸造家。

また、「うちの畑は標高が高いから、こういう剪定方法で、このぐらいブドウを切り落として収量制限しないと…」と分かっている栽培家。

そういった人たちに注目してますし、応援したいなと思っていますね。

新田商店さんの店舗情報

店舗名勝沼ワイナリーマーケット新田商店
住所山梨県甲州市勝沼町休息1560
Webサイトhttp://www14.plala.or.jp/nittawine/info.htm

編集後記

一昔前までは、日本のワインはお土産用のワインというイメージが強く、海外のワインと比較して低く見られがちでしたが、近年ではとても美味しくなったと評価が高まってきています。

新田さんが仰られた通り、海外のワインには海外のワインの良さがあるし、日本ワインには他の国のワインにはない日本ワインだけの魅力があると思います。

もはやワインという大きな括りで比較して語るのではなく、それぞれ「別の飲み物」として、それぞれの良さを認め合っていくことが大切ですね。

当メディアも、これからの日本ワインの在り方や進む道に注目し、そして今後も情報発信していきたいと思っております。

それではまた。

ABOUT ME
武田サキ(スタジオスコップ)

写真家 / グラフィックデザイナー / 取材ライター

平成生まれ。山梨県出身。なんでも挑みたいポジティブな女。
国内SNS等での作家活動を経て、ビジュアル制作のスタジオスコップを立ち上げる。

35mmフィルムとクラシックカメラを使い、広告やビジネス写真を中心に活動。また、デザイナーとして写真を活かした広告・ポスターなどのグラフィックデザインを手掛ける。

取材ライター、遊園地アトラクションスタッフのキャリアを活かし、心地よくリラックスできるコミュニケーションを大切に写真・デザイン業に励む日々を送っている。