インタビュー

山梨ワインの専門店『勝沼ワイナリーマーケット 新田商店』【日本ワイン好き必訪】

山梨県は甲州市勝沼町に日本ワイン好きにはたまらない素敵なワインショップがあることをご存知でしょうか?

その名も『勝沼ワイナリーマーケット 新田商店』さん。

新田商店さんは、県内65社ものワイナリーから仕入れた山梨ワインを中心に販売されているお店で、山梨県外からも飲食店のオーナーさんなどがワインを仕入れに来ることも多いという、まさに知る人ぞ知るワインショップ。

今回はそんな新田商店さんのことをもっと詳しく知るべく、新田商店の店主であり(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザーの資格を持つ新田正明さんに、日本ワイン維新編集部の武田がインタビューに行ってきました。

Contents

新田商店さんはどんな経緯で山梨ワインのお店になった?

武田
武田
勝沼ワイナリーマーケット 新田商店さんはどんなコンセプトでお店をはじめられたのでしょうか?
新田さん
新田さん
父の代まではいわゆる町にある酒屋さんでした。けど、武田さんは若いから町の酒屋さんといってもピンとこないかもしれないですね。
武田
武田
確かに…あまりピンとこないかもしれません。
新田さん
新田さん
今ではコンビニやスーパーに行けばお米もお酒も買えるけど、まだ私たちが若い頃は、お酒は酒屋さん、お米はお米屋さん、野菜は八百屋さん…という感じで、お酒は酒屋さんに行かないと買えないっていう免許制度があったんですよ。

父の代では、なんでも置いてある酒屋さん。いわゆるコンビニの走りみたいな感じでしたね。タワシだったり、お店が小学校の目の前にあるから文房具や赤白帽に縄跳びまで売ってて…。

そしてお米、塩、お酒、タバコ…と、いわゆる専売ものを売ってました。

武田
武田
そうだったんですね…!
今とは全然違ったお店だったんですね。
新田さん
新田さん
ほら、田舎って近くにあんまりお店がないから、「あそこに行けば何でも売ってる」っていうお店に需要があったんです。

だけど、90年代に入ると規制が緩和されてお酒もお米もどこでも売ってもいいよってなって…

そうなるとうちがここでやる意味が薄らいできましてね。近くにコンビニが2軒も3軒もできたということもありますし…。

武田
武田
そうですよね…。
新田さん
新田さん
じゃあうちがここでやる意味って何かな?って考えたときに、地元のワインをよく勉強したりして、それをこの勝沼から全国に発信していくほうが、自分がここで商売をする意味があるのかなっていう、そんなコンセプトでやりはじめたんですよ。

ワインアドバイザーの資格を持つ新田さん。その経歴とは…?

武田
武田
新田さんの経歴について教えていただけますか?
新田さん
新田さん
大学を出て直ぐにテレビ番組の制作会社に8年間勤務しました。
海外の情報番組とかクイズ番組がすごく多かった時代で、そういった取材ディレクターをずっとやって世界中をぐるぐる回っていました。
武田
武田
そうだったんですね!
でもその後なぜ勝沼に?何かきっかけなどがあったんでしょうか?
新田さん
新田さん
そういう情報番組を作っていると世界中のいろんな国や地方に行く機会がありました。

フランスやイタリアの田舎を取材していると、彼らは自分の生まれ育った地域に根差したものに誇りを持っていて…
例えば農業や工業などの生産しているもの、そういったものに誇りを持っていることに感銘を受けたんです。

自分が生まれ育った勝沼も、ブドウやワインの産地でもあるから、世界中を見て感慨深いところがあって。
「これは自分も田舎に帰って、そういう仕事に従事してみるのも面白いな」って思ったんです。

それで勝沼に帰ってきてお店をはじめたときに、先程言ったようにちょうど時代も変わってきていて。いままでのスタイルの酒屋さんだとなかなかお客さんに支持されないなと思ったのと、海外で見た感性・感覚をこの地に取り入れて発信していこうと考えました。

武田
武田
そういう経緯があったんですね…。

ワインアドバイザーの資格をお持ちということですがそれもお店を始める時に?

新田さん
新田さん
そうですね。ワインの説明をしたくて…あと利き酒師とか、お米アドバイザーとかも持ってるんだけど…。
武田
武田
お米アドバイザー!?(笑)
新田さん
新田さん
そうそう。いわゆるお米のソムリエで、精米技術や、品種によってこういう味がするとかね。
武田
武田
すごい…!面白いですね
新田さん
新田さん
結局90年代以降はものを売るためには情報を自分がしっかり持っていないと、お客さんに満足してもらえない時代になったんですよね。
しっかりと商品説明ができて、さらに自分のコンセプトとか考え方がお店に反映できるお店になっていかないと。

うちの場合はワインといっても世界中のワインを取り揃えるのではなく、日本、特に山梨のワインに特化しています。

いま、どんな業界でもそうだと思うんですけど、どこかひとつに特化していて、より専門的なお店が求められていると感じるんですよね。

武田
武田
あの商品だったり情報だったりを手に入れるなら、あそこのお店に行こうってことですよね。
新田さん
新田さん
そうですね。そうすると、例えばうちの場合は山梨のワインが大好きだっていう人たちは、東京や大阪、北海道や九州からだろうが、山梨のこの場所に買いに来てくれるんです

これからは個人で商売をしている人が専門性を高めていくことで、地方の活性化にも繋がると思いますね。

新田商店さんのワインコーナーを紹介してもらいました

武田
武田
お店のワインコーナーをご紹介していただけますか?
新田さん
新田さん
そうですねー…例えばこのコーナーは大体がこだわった赤ワインが揃っていますね。
赤ワインコーナーの写真
新田さん
新田さん
そしてこのコーナーはスタンダードなシュール・リータイプの白ワインですね。
武田
武田
シュール・リータイプというのは…?
新田さん
新田さん
シュール・リーというのは製法のことですね。

大体どのワイナリーも80年代後半からシュール・リー製法を取り入れたことで本格的な味のワインになっていったと言われているんですよ。

武田
武田
へぇ〜そうなんですね!
新田さん
新田さん
シュール・リー製法を用いた甲州ワインはメルシャンで考案されたのですが、「こうやって作ると美味しいよ」というのを業界全体に情報公開して広め、山梨・勝沼をワイン産地としての資質を上げていこうという動きがあったんですよ。
武田
武田
素晴らしい考え方ですね…!
新田さん
新田さん
うちの場合こんな感じで、お店の中でどうワインが並んでいるかというよりは、お客さんと店内をくるくる回ってこんな風にお話をしながら選んでいただくっていうスタイルでやっていますね。
武田
武田
なるほど〜。
これは楽しいし勉強にもなって素敵な体験になりますね。
新田さん
新田さん
だから基本的にはどこにどれって感じじゃないんですよね。

アルバイトの子がどんどん並べちゃうから、逆に私が「どこにあるの!?」って探したりもしますね。(笑)

武田
武田
(笑)
甲州ワインの名前でよく見る「シュール・リー」って何?シュール・リー甲州のオススメは?日本を代表する白ワイン用ぶどう品種「甲州」。 そんな甲州ワインのラベルや商品名などに「シュール・リー」という言葉が書かれているのを...

新田商店さんに訪れるお客さんについて

武田
武田
普段はどんなお客さんが来られるんですか?
新田さん
新田さん
ほとんど7割以上が県外の方です。土日にワインをお求めにきたりとか、もちろん観光の方も来るんだけれども、ホテルや料理店さん関係の人も、全国から来てくれるお客さんが増えています。
武田
武田
なるほど、自分のお店でワインを出すプロの方も多く来られるんですね。
新田さん
新田さん
そうですね。どんなコンセプトのレストランなのかを聞いて、提供されているお料理に合いそうな、こんなワインはいかがでしょうか?とご提案させてもらったり、お店で提供するメニューに合わせてコメントを書いてあげたりもしています。
武田
武田
とても素晴らしいサービスですね…。
新田さん
新田さん
そうしていくと、非常に濃い繋がりができるんですよ。
ただスーパーとか百貨店とかのように商品を買ってもらっていく、っていう感じにはない繋がりというかね。
お互いにとっていい関係ができるんです。
武田
武田
なるほど…。
プロフェッショナルを追求するお店の方が、ワインのプロフェッショナルである新田さんに情報を求めに来るということですね。
新田さん
新田さん
そうですね。話しているとオーナーシェフの方も、「あ~、じゃあこれもあの料理に合いそうですね!」なんて、飲まなくてもお互い大体わかるんです。

ソムリエさんとして偉くなればなるほど、年代と地域と作り方を聞けば、大体は味と香りが連想できる人が多くて…やはりプロですね。

武田
武田
一つの道を極めるプロって、やはりすごいですね…。

 

 

武田
武田
逆に、これからどんな層の人に来てもらいたいという想いはありますか?
新田さん
新田さん
農家や醸造家、酒販店もどんどん若い人たちがでてきているし、次の世代の人たちが日本のワインを頑張っていってくれたらいいなぁと思いますね。

武田さんやヒラヤマくん(当メディア編集長)みたいに、「ワインの話聞きたいんですけど…」って言って来てくれる若い子は、なんとなく…応援したいかな。

武田
武田
うわ~~~!よかったです!
新田さん
新田さん
50代、60代くらいのライターさんが、物書きの感じでくるよりは、「全然ワインわからないけれども、これから知らない人たちや世代に発信していきたい」って、知らない人たちと同じ目線で発信してもらえるからいいなぁと思います。
もしかしたら、ワインマニアだと難しい言葉を並べてしまうかもしれないですしね。
武田
武田
ありがとうございます…!よかったです…!
新田さんお優しい…!
新田さん
新田さん
世の中には全く知らないひとの方が多くて、マニアの方が少ないですからね。
武田さんやヒラヤマくんたちには今の気持ちを忘れずにこれから発信していって欲しいですね。

新田商店さんの店舗情報

店舗名勝沼ワイナリーマーケット新田商店
住所山梨県甲州市勝沼町休息1560
Webサイトhttp://www14.plala.or.jp/nittawine/info.htm

編集後記

様々な経歴を経て、地元地域に根ざしたワインのお店をかまえた新田さん。

とても穏やかな人柄で、唐突な取材のお願いだったにも関わらず、私たちを優しく迎え入れてくれました。

きっとワイン初心者の方でも、「こんなワインが好きなんですが…」と新田さんに相談してみれば、あなたにオススメのワインを紹介してくださると思いますよ。

山梨を訪れた際には、是非「勝沼ワイナリーマーケット 新田商店」さんに足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

新田さんにはこの他にも日本ワインに関する色々なお話をお伺いしましたので、その模様はまた別の記事として連載いたします。お楽しみに!

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ABOUT ME
武田サキ(スタジオスコップ)

写真家 / グラフィックデザイナー / 取材ライター

平成生まれ。山梨県出身。なんでも挑みたいポジティブな女。
国内SNS等での作家活動を経て、ビジュアル制作のスタジオスコップを立ち上げる。

35mmフィルムとクラシックカメラを使い、広告やビジネス写真を中心に活動。また、デザイナーとして写真を活かした広告・ポスターなどのグラフィックデザインを手掛ける。

取材ライター、遊園地アトラクションスタッフのキャリアを活かし、心地よくリラックスできるコミュニケーションを大切に写真・デザイン業に励む日々を送っている。